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2015年2月 1日 (日)

【資料】武術稽古法研究43◎『中間重心』と『例の力』 (1996年)

本日2月1日(日)夜の◎特別講座「甲野善紀の術理史 第15回 ~ 重心と浮き」のテーマに関連した、1996年当時のわたしの稽古研究レポートを転載します。

武術稽古法研究43 
中島章夫
日付1996/08/12
◎『中間重心』と『例の力』
●『中間重心』

 8月9日の コミニティカレッジで、甲野先生から、『中間重心』からの「浮き」についての説明があった。『中間重心』については、最近よく聞くことばなのだが、イマイ チ判然としないものがあった。この日『中間重心』と「身体の浮き」が関連づけられるのを聞いて、ちょっとした手がかりを得たような気がする。
 甲 野先生の姿勢は、『中間重心』と言いながら後ろ足に重心がかかっている様に見える。しかしそれは腰の反りがないので、後ろに体重がストンと落ちて見えるた めのようだ。そしてその腰からストンと落ちた重さが、感覚的な言い方で申しわけないが、足もとから両足の間を巡って上昇し一点で腰全体を支持するのであ る。その支持する力が、体勢のさらなるまとまりで、上のほうに抜けていくと「身体の浮き」の状態になるのではないか。つまり『中間重心』は開いた両足の中 間に体重を落とすことではなく、落とされた体重が両足の中間を通って身体を下支えする立ち方だったのようである。こう気づいてみると、これまでの稽古の中 で甲野先生は何度もそうおっしゃっていたような気もする。この頃は自分の稽古のテーマに気が行って、先生の話をよく聞いていないのかもしれない。反省させ られるところだ。
●『レイの力(?)』
 『レイの力』は「霊の力」ではない。『例の力』である。もしかしたら今日(8月16日)の稽古ではちゃんとした名称があるかもしれない。コミニティカレッジの時点では発見して2日目だと言うことなので、まさか消えてしまっているということはないだろう(たぶん)。
  『例の力』は、それでも「霊の力」と勘違いしても不思議ではないような第3の力が働く技法である。特に術者から相手の手なり腕なりを取っていく掴み技に顕 著に効果があらわれるようだ。相手との接触面には誘導したい方向にわずかな圧力を加える(方向性を与える)。同時に誘導したい側にある自分の身体(足な ど)の方から寄るようにする。文章にするのは難しいが、相手を自分の足もとに崩す代わりに崩す方向にある足の方から寄ってくることで、相手は崩れた状態と 同じになるということらしい。もちろん現実の動きとして足が寄ってくるわけではない。しかし甲野先生の意識では「相手の腕で逆上がりをする」ような感覚ら しい。
 こうして相手の接触面に2方向の力が収斂する様子は、まるでハサミで接触面を挟み込んだようだ。ただ相手は逆方向からハサミの片方の刃が 追ってくるとは認識できない。しかもその時の先生の雰囲気から感じるのは、ハサミで挟んでスパッと切ってしまうのではなく、むしろ切れないように注意深く 挟んでいるような状態なのだ。ピンセットで紙をつまむのは簡単だが、よく切れるハサミで切らないように紙をつまみ上げることを想像して欲しい(*)。それ に似た、非常に集中した微妙な感覚によって2方向の力が収斂した時、『例の力』が生まれて突如相手が予期せぬ方向へ動き出してしまうようなのだ。それがま るで傍らから誰かに引っ張られるような、甲野先生の言葉を借りれば「突然車のようなものが現れてゴロゴロと横滑りしてしまう」ような感じで動いて(動かさ れて)しまう。しかも、この『例の力』は、術者の力と相手の力がひとつになった、どちらの力ともどちらが動かすとも言えないような感じらしい。それ故「霊 の力」との聞き違いも、感覚的にはあながち見当違いとは言えないのである。
●「あるまとまり」
 『例の力』に関する甲野先生の説明を聞い ていると、ひとつひとつは決して新しいことではなく、前にも聞いたことがあるなじみのある事のような気がする人もいるだろう。しかしそれが「あるまとま り」の中で働く時、質的に転換した、新しい動きとして出現する。この「あるまとまり」にこそこの術理の消息があるのであり、『中間重心』からの「身体の浮 き」の感覚がその鍵を握っているのではないかと思う。

*そんな人はいないと思うが、ハサミで紙をつまみ上げる技術と『例の力』の技術が同じだというわけでははないので、ハサミの稽古をしても無意味だろう。こうした例えは自分の想像力を超えてしまうような感覚を少しでも身近なものにするための方便なのである。
以上


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