« 本日12/13は「甲野善紀の術理史」「韓氏意拳入門」 | トップページ | ◎2014年12月の技アリ企画「ロシア武術システマ」 »

2014年12月13日 (土)

【武術稽古法研究32】折りたたまれる平行四辺形——『井桁術理』の新たな側面

当日のお知らせとなった、◎特別講座「甲野善紀の術理史 第14回 ~『新・井桁術理』他~」ですが、今回は1996年の「新・井桁術理」の前夜、という感じでお話しします。

「新・井桁術理」が誕生する過程で、わたしが書いたレポート「武術稽古法研究」があるので、転載しておきます。
術理についてだけでなく、こんな風に考えながら甲野先生の技を稽古していたという参考になればいいのですが。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

武術稽古法研究32
中島章夫
日付1996/04/04

◎折りたたまれる平行四辺形——『井桁術理』の新たな側面

●「井桁術理」のもうひとつの特徴
 『井桁』の基本は言うまでもなく「廻さず・ねじらず」だが、平行四辺形をモデルとしたのは、支点を中心とした一般的な動き(悪しき円)を否定して「平行四辺形がつぶれていくように」動くことを表すためだった。
「つぶれる」と言っても、実は、積み重ねられたツルツルした紙を踏んだ時、紙の1枚1枚が前方に滑っていくような、紙の束が「ずれながら前進する」動きであり、「ずらし」と言うほうが身体感覚的にはしっくりするかもしれない。この概念はその後の展開の中に埋もれているが、なくなったわけではなく、「当たり前のこと」として殊更語られることがないだけのことだろう。
 ところがここに来て甲野先生は平行四辺形をもとに新たな術理を発見した。平行四辺形に力が加わったとき、
それぞれの支点は抵抗することなく「パタン」と折りたたまれる。技においても相手との接点圧力をかわしたりずらしたりするのではなく、そのまま「パタン」と負けてやるのだ。そして相手の力とぶつかりそうなところを次々「パタン、パタン」とたたんでいくとほとんど力を入れることなく相手を制することができる、という。 もちろん、折りたたまれるための支点となる部分が、ヒジ関節やヒザ関節といった単純な部位ではないので、決して簡単でもわかりやすくもないのだが、独特の感触のある技法である。

●「折りたたみ式井桁(仮称)」の印象——砲身を覗く
 受けてみた印象は、井桁以降の流れとは異質な感覚のある技だということだ。あの『体内波』でさえも「『井桁』という種から初めて開いた花」(稽古法研究「『体内波』=支点の処理から支点の質的転換へ」95/01/18)だと思えたのだが、今回の術理(ここでは仮に「折りたたみ式井桁」と呼ぶ)は、同じ根を持ちながら脇から伸びてきた別の幹、といった感じなのだ。
 まず、今までの技には「色気」というか「趣」があった。ところが「折りたたみ式井桁」には、確かに技は効くのだが、「うわ−っ」とか「ひえ−っ」とかいう感動がない。妙にさっぱりと感じるのも、それだけあっけないせいかもしれない。あっけないといっても、瞬時に技が決まるわけではなく(もちろん瞬時にも決められるだろうが)、「パタン、パタン」と動いてくる手続きの時間がある。しかしその手続きもこちらを制するための動きとは感じられず警戒心を、少なくとも私の警戒心を呼び起こさないのだ。
 手続きということに関して言えば、「折りたたみ式」は『舞』に似ているといえる。しかし『舞』の場合、こちらの力を先生が全身を調養しつつ流していく手続きの段階で、「これはちょっとヤバイぞ」「来るぞ、来るぞ」といった感覚があった。しかし「折りたたみ式」の場合、そういった圧迫感はなく、先生の手が出てくる瞬間は、いわば「真っ暗な砲身の中を無警戒に覗いていたら突然弾が飛び出してきた」という印象なのだ。この例えで言い換えると『舞』の場合は、「この覗いている物はちょっと危ないかもしれない」と思わせる雰囲気を持っているのだが、「折りたたみ式」では弾が飛び出してきて初めて砲身であることを知るのである。

●「倒す意識」のない世界へ
 この「さっぱり感」「趣のなさ」といったものは、この技法を考える上で大きな手がかりになるような気がする。こうした感触は、相手の力を直接受けないように「パタン、パタン」と折りたたんでいく「作業の付随現象」として相手が倒れている、という意識状態(倒す意識のない状態)が大きく影響しているのではないだろうか。明らかに相手を制するために何かをするのとは意識の地平が異なるのである。
 今後この技法はより「内観的」となり、手続き的動きも小さくなって、見かけ上からは「折りたたみ」が連想しにくくなることが予想できる。そして一瞬の動きの間に手続きが終わっているように「折りたたみ」がより割れてきた時、いわゆる「予も知れぬ所」(起倒流・加藤有慶の言葉)の技を「予が知りつつ」行える領域への入口が開かれるのかもしれない。

以上

|

« 本日12/13は「甲野善紀の術理史」「韓氏意拳入門」 | トップページ | ◎2014年12月の技アリ企画「ロシア武術システマ」 »

武術稽古法研究レポート」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【武術稽古法研究32】折りたたまれる平行四辺形——『井桁術理』の新たな側面:

« 本日12/13は「甲野善紀の術理史」「韓氏意拳入門」 | トップページ | ◎2014年12月の技アリ企画「ロシア武術システマ」 »