【稽古メモ】「空握(くうあく)」と「離陸」
◎「空握(くうあく)」と「離陸」
●卵殻の手の内
このところワンテーマに絞った講習会をやっていて、そのテーマのひとつに「足裏の垂直離陸」がある。
これがだんだんに「離陸をかける」ことそのものに焦点が移ってきている。
1997年頃の松聲館の技法に「卵殻の手之内」がある。これは今考えると相手の腕などを握った手のひらに離陸をかけることだと言って良い。
これまでは、握っている指先などを「引き離そうとするが、離れない」という拮抗状態を作るという操作をしていた。
しかし今回発見したのは、架空の腕を握り込んだ「フリ」をすることが、そのまま離陸をかけることになるということであった。
つまり空中で「腕を握っている」パントマイムをするということである。
こうすると、あたかも「握っている」かのように見せるためには、指先を架空の手の太さに固定しなければならない。このとき順逆の拮抗状態が作られる。
もちろんここは「ふんわりと握る」のではなく、「ギュッと握り込む」のでなくてはならない。
これを「空握(くうあく)」という。(要するに「エア握り」のことだ)
●拝み取り(仮)
甲野先生が相手の腕を、柔らかく拝むように両手で掴んでいくという稽古のシチュエーションがある。相手は掴まれないように手を引くが、ただ触れているだけに感じる甲野先生の手にキャッチされて自分が引こうとする力で先生の方に引き寄せられてしまう。
このときの手の内はピタッと吸いつくようなのだが、けっして「握る」ということはしない。
この感触はいわゆる「続飯付け(そくいづけ)」なのだが、「卵殻の手の内」がこなれたものだともいえる。
そこで「空握」で行ってみる。
この場合、空中にある仮想の腕を握るだけでなく、相手が腕を引っ込めるのを引き返すという、いわば「綱引き」のような状態を体全体で作る。
この状態の指先で相手の腕をキャッチすると、相手は腕を引っ込められなくなり、「拝み取り」の形になる。
●仮定だからこその働き
もともと離陸の稽古が、「床にくっついていないのに、あたかもくっついてしまったかのように」みたいな仮定の身体状態を作り出すわけで、それが相手との関係の中に異空間を生み出すのである。
そこで「足がくっついて」のような部分的な意識ではなく、たとえば「直入身」のようにこちらの両手首を押さえて進行を阻止している体で、パントマイムのごとくひとりで押しあってみる。
こうするとからだ中で演じなければならない。この感覚のまま実際の人相手にやってみると、「離陸をかけている」という意識をせずに「離陸をかける」ことができることが分かる。
考えてみると「薄氷を踏む足」も、実際に薄氷を割らずに踏むときの足ではなく、「あたかも薄氷を割らないように踏んでいるかのような足遣い」であるからこそ離陸の働きが生まれるのではないかと思う。
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コメント
なるほど
投稿: | 2010年2月22日 (月) 14時32分