◎構造動作と武術〜特に連動伸張反射と構えについて
骨盤おこしの中村考宏先生から、構造動作(骨盤おこし)と武術について書いてほしいと前々から言われていた。
なかなか書けずにいたのだが、ようやくまとめたので骨盤おこしの中村先生に送った。
せっかくなので、ブログにアップすることにした。
「骨盤おこしトレーニング」という名称からは、健康法的な、あるいはスポーツトレーニング的な印象をもっている人もいるかもしれない。しかし人間の運動を扱う股関節・骨盤トレーニング学として骨盤おこしには、こういう側面もあることを知ってもらいたいからだ。
興味を持たれた方がいたら、ぜひセミナーにも参加していただきたい。
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◎構造動作と武術〜特に連動伸張反射と構えについて
●連動伸張反射
構造動作、骨盤おこし運動で武術の動きと直結するのが「連動伸張反射」という考え方である。
武術というのは、気配なく動き出すことが必須である。ねじらない、蹴らない、溜めないというのもそのために必要な身体の操法である。
その動き出しには意識が関与しないことが望ましい。というより意識的である限り、気配を出さないというのは無理だと思われる。なぜなら意識的操作が気配を発するからである。
甲野善紀先生が技をかけるときに「瞬間気を失っている」とか「ゆっくりと気を失っていく」のような表現をしているのはそういうことではないかと思う。
その動きを可能とするのが「連動伸張反射」なのである。
「伸張反射」というのは、筋肉を適度に延ばしてテンションをかけておくと、ちょっとした刺激で筋収縮が起こるということである。
たとえば「脚気の検査」で、膝下をポンと打つとスネが上がるが、これが伸張反射の例である。
これは膝を深く曲げて大腿四頭筋にテンションをかけることが必要である。膝の曲がりをゆるめてしまうと反射が起こりにくくなるのは、大腿四頭筋が緩んでしまうためである。
また、こんな経験はないだろうか。
飲み物が一杯に注がれたコップを、こぼれないようにそうっと運ぼうとして、肘がどこかにぶつかり、からだがビクッとしてこぼしてしまうようなことだ。
肘が壁にちょっとぶつかっただけなら、そんなに大きくコップをゆらさなくてもよさそうなものだと思う。しかしぶつかった衝撃以上に腕が動いてしまうのは、こぼさないようにと腕が緊張しているところに思わぬ衝撃があって、腕の筋肉が反射的に収縮してしまうためだろう。
このように筋肉の伸張反射というのは「思わず動いてしまう」のである。
しかしただ「思わず動いてしまう」だけなら技を使うことはできない。この伸張反射を技という目的のために利用するのが「構え」だといえる。
つまり「構え」は、目的とした動きが出るように各部の筋肉に適度なテンションをかけるためのものと考えられる。
必要な伸張反射を得られる骨格のポジション(=姿勢)こそが構えの中身である。
伸張反射が部分で起こるだけでは、全体の動作として十分に働くことができない。
構えはからだの様々な部位で起こる筋肉の伸張反射を、目的の動きのために統合する働きもある。つまりある動作のために必要な筋肉の伸張を準備することに「構え」の働きがあるといえる。
そしてあるきっかけをトリガーとして、一斉に反射を起こして瞬時に、そして同時に動きがはじまる。
この「一斉に」というのが、伸張反射が連動して起こること、すなわち構造動作が提唱する「連動伸張反射」である。
「反射」であるために、意識が入り込む余裕はなく、気配が出ないのはそのためである。
意識の介入は構えをとるところまでで、構えも習熟するにしたがって関与が薄くなる。
ここで問題となるのは、連動伸張反射を効率よく行える構えを見つけ出すことである。
これは構えを一から作り出すという意味ではない。流儀に伝わる型の中にもう一度それを見つけ直すということである。
だからそれは型を覚えるだけで得られるものではない。型や構えの稽古のなかで、連動伸張反射が起きるポジションまで突き詰めて行くことが稽古なのだとわたしは考えている。
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